第4回 秋田市水道発祥の地と藤倉記念公園

重要文化財「近代化遺産」として全国で初めて指定された水道施設

藤倉水源地は、秋田市における伝染病発生防止のための飲料水供給および防火用水の確保等を目的とし、明治36年(1903)に建設が開始され、同40年(1907)の給水開始後、同44年(1911)に全施設が完成しました。堰堤の下流約370mの位置には、沈でん池と事務所、番人公舎、倉庫などがありました。また、バイパス管が整備されており、濁りの少ないときは沈でん池を通さずに大木屋(おごや)浄水場(現在の千秋公園内)に直送していました。以来、市民の水がめとして、約70年の間、秋田市民に清涼な飲料水を供給し続けましたが、昭和48年に上水道源の雄物川への完全切り替えに伴い、藤倉ダムは取水を停止しました。その後市民からは長らく忘れられたような存在となっていましたが、平成5年(1993)国の建造物の重要文化財「近代化遺産」に指定され(注[1] 参照)、再び脚光を浴びることとなりました。これは群馬県の碓氷峠鉄道施設とともに、近代化遺産としては初の重要文化財指定事例となったものです。平成19年(2007)には、秋田市が水道100周年を迎えるにあたり(注[2] 参照)沈でん地跡地一帯を藤倉記念公園として整備し、先人達の偉業を称えるとともに、市民が憩えるスペースがオープンしました。藤倉ダムは取水を中止していますが、藤倉記念公園一帯には明治時代の水道施設全体が良好に保存されており、日本土木史上価値が高いとされています。

注[1] これに先立つ昭和60年(1985)、近代水道百選(厚生省企画・日本水道新聞社主催)に選定されている。重要文化財には、本堰堤(ダム)、副堰堤、放水路、鉄トラス橋、送水管、沈殿池(現在は埋め立て)などの構造物と、これらを含む土地(貯水池含む)が「藤倉水源地水道施設」として一括で指定されている。

注[2])秋田市の水道事業は、全国で11番目、東北初の近代水道として大木屋浄水場からの給水が開始された明治40年(1907)を起源としている。藤倉ダムは、明治44年(1911)に完成した。

藤倉ダム

形式 重力式コンクリートダム
堤高 16.3m
堤頂長 65.1m
有効貯水容量 239,200m³
着工年/竣工年 1903年/1911年
所在地 秋田市山内字上台および字大畑
行き方 JR秋田駅西口4番からバス「仁別リゾート公園線」に乗車、釣りセンター前で下車、徒歩10分。車は JR秋田駅より約25分

記念碑(写真手前)と記念像(左秋田市上下水道局マスコットキャラクター「かんちゃん」)

記念碑(写真手前)と記念像(左秋田市上下水道局マスコットキャラクター「かんちゃん」)

記念公園全景

記念公園全景

参考資料

藤倉水源地ものがたり(秋田市上下水道局発行)

藤倉水源地ものがたり(冊子):国指定重要文化財・近代化遺産「藤倉水源地」と秋田市の水道の歴史を写真と文章で詳しく紹介(秋田市上下水道局発行)

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