初めて国の重要文化財に指定された駅舎に現存する給水設備
JR門司港駅は、レトロな木造駅舎で知られている。当初は、九州鉄道の起点の駅として1891年(明治24年)に門司駅として開設された。現在の駅舎は2代目であり、1914年に初代の駅舎の西方に建築され、88年に駅舎として初めて国の重要文化財に指定された。
左上の写真は洗面所である。その前には「帰り水」。と呼ばれる蛇口がある。説明板には、『この水道は駅が開設された頃に設置されたもので、以来、旅行者に門司の「おいしい水」を供給し続けています。とくに、戦前の海外旅行帰国者をはじめ終戦後の復員や引揚の人達が、門司に上陸して安堵の思いでのどを潤したところから、(誰言うとなく)「帰り水」と呼ばれる様になりました。』とある。当時にあっても蛇口から水が飲めるという日本の文化が推測できる。
洗面所内部には今も現役で使用されている洗い場がある。手入れが行き届き、タイルはぴかぴかに磨かれている。蒸気機関車(SL)が走っていたころ、夏場には窓を開けていたため、乗客は、機関車の煙で真っ黒になり、この洗面所で顔や手足を洗っていた。洗面台を低くしてあるのは、足を洗いやすくするためであったからのようである。
古い施設などで当時の蛇口などが残されている所は数多く存在するものの、実際に使えない場合が多いが、これらの水道施設は何時でも使用可能なように整備されている。
また、冒頭の写真右は現在も使われているトイレである。
その男女トイレ入り口を分ける位置には大型の青銅型の手洗い器が設置されている。説明板には、『大正3年の建設当時からあり、戦時中の貴金属供出からもまぬがれ現在も鋳造時の形のまま、長寿を誇っております。』とあり、門司港駅を見守っている。そのため、「幸運の手水鉢(ちょうずばち)」と呼ばれているとのことである。
そういう謂われのせいか、鉢の底には小銭が沈んでいる。
所在地 | 福岡県北九州市門司区西海岸一丁目 |
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参考 | 平成30年まで保存修理工事中のため、駅舎正面からの入場は不可であるが、「帰り水」や「幸運の手水鉢(ちょうずばち)」は使用可能。 |