日本水道協会研修事業の紹介

筆者:星野 力 

水を語る会のリレーエッセイの誌面をお借りして、日本水道協会の研修事業を紹介させていただければと思います。

1.職員数の減少
 日本の水道事業における職員数を見てみますと、昭和40年の時点で職員数は60,974人、その後の水道普及率の向上、給水量・給水人口の増加に合わせるように昭和45年に66,594人、昭和54年に74,858人のピークに達しました。その後の行財政改革の流れにあわせるように検針業務等の委託化の進展など水道事業に業務の外部委託が増え、職員数は減少に転じ、平成27年には52,290人と大きく減少しています。
さらに水道事業体における人材育成の問題点として、水道技術職員の減少、一般部局との頻繁な人事異動により水道業務に精通した職員が不足していること、さらにベテラン職員の退職により、日常業務を通じた業務指導ができなくなってきている現状が伝えられています。

2.日本水道協会が実施する研修概要
 こうしたことから、日本水道協会では、水道事業に従事する職員の人材育成を目的として、新任水道事業管理者研修から基礎講座から、浄水・機械電気等の技術者専門別研修を実施するなど、階層別・専門別に必要な知識・技術の習得や、その時代のニーズを捉えた柔軟な研修プログラムの提供、実際の実務に活きる知識・技術の習得を基本理念として掲げ、定期研修を実施しています。年間をとおした研修プログラムは、全国7ブロックで開催する水道技術者ブロック別研修会や水道技術管理者研修会等をはじめ、年間20コース、トータルで約6,500名の方々が研修にご参加いただいています。
 特に近年、水道施設における自動化や遠方監視等の進展により、日常業務を通した事故対応や現場における技術の習得が難しいとのことから、体験型研修に対するニーズの高まってきており、東京都や大阪市が所有されています実技研修施設をお借りしまして、浄水場の運転管理や漏水防止業務など、実践的な研修を実施しています。実際の機器類を使用して、浄水処理実習、ポンプを分解して再度組み立て、漏水探知研修などを行っています。
 ただし、カリキュラムの関係からどうしても参加できる人数が少数となってしまい、多くの方を受け入れることができず、毎年、多くの方々がキャンセル待ちとなってしまい、ご参加いただけていない状況となっています。
 また、定期的に開催する研修会のほか、水道維持管理指針の改訂や制度改正・各種ガイドラインなどの発刊に合わせて随時研修会を開催するようにしています。

3.水道施設管理技士制度
 次に水道施設管理技士制度について紹介します。平成14年度の水道法改正により、浄水場の運転管理、水質管理などの水道施設の管理に関する技術上の業務について、民間事業者等の技術的に信頼できる第三者に委託できる制度(第三者委託)が創設されました。
わが国の水道産業界は、水道施設・設備の建設、製作等に対しては非常に高い技術力を有しています。しかし、水道施設の維持・運転管理は水道事業体が直営でおこなっているため、民間等において施設・設備の維持管理のノウハウを蓄積する機会が少なく、どのくらいの技術能力を有するのか明らかでないことが課題とされました。このため、今後の水道施設の維持管理のパートナーとなっていく民間等の技術者の技術力を適正に評価する制度として、平成16年度より水道施設管理技士資格制度が発足したものです。
この制度は日本水道協会と水道技術研究センター、給水工事技術振興財団、全国簡易水道協議会の4団体が立ち上げた資格制度であり、認定機関に係わる事務を日本水道協会が行っています。
本制度への登録にあたっては、技術者の3年以上の水道実務経験と実際に水道事業体が所有する水道施設の維持・運転管理に携わった1年以上の現場実務経験を評価するととともに、水道に関する知識を評価しています。
資格の種類としては、浄水施設及び管路施設の2種類があり、それぞれ1級から3級の3段階となっています。3級は水道実務経験を評価して資格を認定し登録する仕組みとして、2級および1級は、学歴、水道事業体等での水道実務経験及びその他の有用な資格・経験を受験資格要件として試験を例年1月末に実施し、その合格者に資格を認定、登録を行っています。
この水道施設管理技士制度は、水道事業体が浄水場の運転・維持管理等を委託するにあたって、水道事業者にとっては、委託先の技術レベルを客観的に評価することができるとともに、仕事を受ける側である民間事業者にとっては、自らが有する技術力を客観的に証明できる資格制度として活用できるものと思っています。

4.最後に
 日本水道協会が実施している研修事業は、水道基礎講座、水道事務研修初級など初任者向けの研修から、耐震技術研修会、水質や浄水などの水道技術者を対象にした専門別研修など、様々な階層・分野に分かれた研修プログラムを提供しています。会員以外の方々もご参加いただけますので、人材育成の一環として本協会の研修プログラムをご活用いただきますよう、お願い申し上げます。
 また、日常業務が忙しく研修期間が確保できないとの声もあることから、半日ないしは1日で分野に特化した研修プログラムも検討していきたいと思っております。