第5回 岩手紫波地区水道事業協議会活動日誌

筆者:吉岡 律司

私たちは、矢巾町上下水道課の3人組です。「水を語る会」にはいつも積極的に参加しています。このたびは会員紹介を兼ねて、水道を良くしたい熱い思いをもて活動している紫波地区協議会の取り組みを述べさせていただきます。

岩手紫波地区水道事業協議会は、昭和58年に加盟市町村の連帯並びに親睦を図るとともに、水道事業の技術及び事務、その他の分野にわたる相互の調査研究を通じて、その円滑な運用と水道事業の発展に寄与することを目的に設立されました。

具体的には、PACの普及による浄水技術の変化に対応するため現場の職員が集まり、話し合いを持つようになったのがきっかけと聞いています。

しかし、設立当時の目的を達成した後は時間の経過とともに活動自体が形式化してしまい、集まること自体が目的になっていた時期が続きました。

一方で、各水道事業者は直面する問題をどのようにして解決をしたらよいのか、試行錯誤を繰り返していました。このような中、平成13年に当時の矢巾町上下水道課長伊藤清喜氏と滝沢村水道事業所長主浜隆雄氏がリーダーシップを発揮し、「同じ問題を抱えているなら皆で解決しよう」と協議会活動の再構築に着手したのです。

両氏は小規模水道事業の先行きを悲観するのではなく、ポジティブに水道事業に向かっていました。そして、どちらも「わが町の水道ビジョン」を持っており、協議会のあり方を話し合うなかでよく水道談議に花を咲かせていたのを思い出します。

このようなわが町の水道を思う気持ちが本協議会の原点でもあり、現在の活動を支える根底となっています。

また、再構築にあたって業務棚卸法を活用し、構成市町村の業務の評価を行ったのも特徴的な取組みです。業務棚卸とは組織が追求している多くの目的を特定し、それぞれの目的ごとに目的達成のための手段を樹木構造に可視化する方法ですが、完成した政策体系図はどの市町村もほぼ同じ体系になっていたのです。

この評価で水道事業における政策体系が共通認識となり、勉強会を開催しても「わが町の水道は」というような個別の利害を主張するメンバーはなくなりました。結果として、目的達成のために純粋に水道について議論をしているといえます。

現在は、外部の有識者をアドバイザーとして招いた研修会を定期的に行うだけではなく、職員が独自のテーマを設定し研究会を行うことで、理論と実務を融合し、個別の業務の質を高めていく努力をしています。

さらに、本協議会は8月27日に水道フォーラムを開催しました。

今回の水道フォーラムは「水道事業の本質、そして今後のあり方」と題し太田正作新学院大学総合政策学部教授に基調講演をいただき、つづく第2部では、太田教授をコーディネーターに藪内礼子氏(福島県県南保健福祉事務所生活衛生部長)・市村敬正氏(東京水道サービス(株)経営戦略担当部長)・佐藤裕弥氏((株)浜銀総合研究所地域経営研究室長)の3氏によるパネルディスカッションを行いました。フォーラムには官民を問わず130名の参加をいただき会場を交え活発な議論を行うことができました。そしてその議論を通じ、転機をむかえている水道事業だからこそ、本質に立ち返りこれからを考える必要があると再認識することができました。

最近、全国の同様の協議会からの多くの問い合わせをいただくようになりました。しかし、多くの協議会の現状は従来の延長線上で苦慮しているところが多いようです。

そこで、皆さんに協議会運営のポイントをご紹介します。なんと言っても最大のポイントは「やる気」です。とは言えこれではみなさんの参考にならないので、次の5つをポイントとしてあげたいと思います。

協議会運営のポイント

  1. 協議会の活動目的を明らかにし、共通認識をもつこと
  2. ビジョンを持ったリーダーがいること
  3. みんな同じ立場で議論できること
  4. 外部からアドバイスしてくれる者がいること
  5. 継続すること

多くの者が同じ目的を達成するために、議論を継続していくというのは、とても難しいことです。だからこそ、学び合い、支えあう本協議会の活動を継続することができた、これらのポイントは是非、参考にしていただきたいと思います。

本協議会の活動を通じ、ネットワークが広がり、全国各地の同志と水道について議論できることを楽しみにしています。

「水を語る会」が、こうした水道事業の諸課題の意見、情報交換の場になります。若い方々のご参加を切に期待したいですね。

水道フォーラム基調講演する太田教授

水道フォーラム基調講演する太田教授""

水道フォーラム、パネルディスカッションの様子

水道フォーラム、パネルディスカッションの様子

Post Comment