第8回 国連ミレニアム開発目標と水道

筆者:石橋 良信

水道ビジョン、水ビジネスなど国際化がクローズアップされており、動きもみられる。しかし、国連ミレニアム開発目標(MDGs)という言葉は、水道界ではあまり知られていない概念かも知れない。

MDGsはユニセフ、国連人口基金などの国際機関、取り分け国際保健に関わる分野では重要な目標になっている。MDGsは貧困撲滅と人々のウェル・ビーイングの向上を目指して、2000年のミレニアム宣言に基づき、2001年に189ヵ国により採択されている。

その内容は、目標1の極度の貧困と飢餓の撲滅にはじまり、初等教育の達成、乳幼児死亡や妊産婦の健康、HIV/エイズ・マラリア・その他の疾病の蔓延防止など、2015年までに達成すべき8つの目標と18のターゲットを掲げている。我々に関連する目標は7番目の持続可能な環境の確保であり、地球規模の環境問題の他、安全な飲料水と基礎的な衛生施設を持続可能な形で利用できない人々の割合を半減させることを目指している。

施行されて半分の期間が経過し、最近「国連ミレニアム開発目標報告2008」が示された。報告書によれば、1990年 以来16 億人が安全な水を利用できるようになった。中でも東アジアは普及率が20%上昇したが、全体的に水道の恩恵を受けない人は10 億人と数年前と変わっておらず、サハラ以南アフリカは飲料水源のない人々の3 分の1 以上を抱えている。女性や子どもの水汲みも未だ解消されてはいない。農村部の水道普及率は約30%で都市部との格差も深刻である。

水は多くの疾病に関わることが多いが、すべてのウェル・ビーイングの元凶は貧困であり、貧困からの脱却は医療施設の利用や安全な水の供給につながるであろう。私ごとであるが、過日、日本国際保健医療学会学術大会の手伝いを仰せつかった。講演ではMDGsに関連する話題も多く、国際的動向を把握しつつ水問題解決へ努める必要性を痛感している。

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