第19回 タイ王国チョンブリー県について

筆者:田中 明広

昨年度に工業団地の水事情を調べるため、タイのチョンブリー県に行ってきました。タイと言えば、ビジネス、観光ともにバンコクが有名ですが、そのバンコクから南東約80kmの位置にあり、バンコク市内から高速道路を使って車で1~2時間の距離にある海に面した一帯がチョンブリー県です。首都に近い点や面積などが、私の住んでいる埼玉県に似ている気がします。リゾートとして有名なパタヤもあります。

かつてはバンコク郊外の地方都市だったのですが、90年代初めにレムチャバン港が開港し、現在ではコンテナ貨物取扱量で世界有数の港となっています。また2006年にスワンナプーム国際空港(新バンコク国際空港)が開港し、空港までバンコクの渋滞を経由せずに直接行けるという便利さから日系企業が数多く進出し、工業団地を中心に発展を続けています。

チョンブリー県内には幾つかの工業団地があり、日系企業が数多く入居しており、7割近くを日系企業が占める所もあります。実際に工業団地内を車で走ってみると、日本の自動車や電機等、有名企業の看板が立ち並び、工業団地が日本とタイの産業の発展に大きく貢献していることがわかります。

経済発展が進みアジアの生産拠点として注目されているタイですが、現在、タイ国政府ではハイテク産業や研究開発(R&D)をもっと誘致して、アジアにおける組立・量産のハブからハイテク・R&Dのハブへの転換を図ろうとしているとのことです。そのために必要とされているのが工業団地のインフラで、水もその一つです。

チョンブリー県は沿岸部ということもあって、工業団地の用水事情としては恵まれた環境にあるとは言えないようです。原水の有機物濃度や電気伝導率が高いなどの水質上の課題に加え、将来的には乾期において用水が不足する可能性もあるとのことで、水のリサイクルも検討している工業団地もあるようです。

チョンブリー県の工業団地のように、短期間で急速な発展を遂げている地域では、水の確保というものが課題となり、そしてタイの将来の産業の発展のためには、良質な用水の確保や水処理技術が鍵になるのかもしれないと思いました。

工業団地の原水調査

工業団地の貯水池(9月) 雨期は満々と水を湛えている

工業団地の貯水池(2月) 乾期は水位が大幅に低下

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