第21回 現場直視

筆者:関 栄造

「えー、オレ、行きたくないよー!」、「何でオレが行くの…?」。

先日、縁あって、東日本大震災で被災にあった南三陸町に微力ながらボランティアとして参加させていただくことになりました。参加することが決定して子供に話した際の子供からの第一声です。

普段、新聞やテレビでの報道でしか情報は得られない中、現地を実際に見て確かめ、自分の足で立って、考えてもらいたいと思い、家族会議で子供も連れて行くことになりました。いろいろあって、一番暇そうにしている真ん中の小学五年生と二人で行くことになりました。

震災後半年以上が経過しているにもかかわらず、がれきは数カ所に集められただけで撤去はされていません。小学校の校庭もがれきの山です(写真1)。被災現場に残された時計も、地震のあった14時46分で止まったままです(写真2)。少しずつ復興の兆しは見えてきているものの、実情は何も変っていません。津波のあった低地には住宅を建てることができず、高台への居住が指定されています。都市計画が定まらない今、元々住んでいた方たちは戻ることもできません(写真3)。仕事もありません。息の長い長期的な復興支援が必要です。

現地で実際に被災した方から貴重なお話を聞く機会がありました。何が最も必要であったか。それはやはり“水”でした。小雪が舞っている中、暖をとる手段や情報収集は百歩譲って何とかなったそうですが、飲み水だけはホントに困ったそうです。仕事柄、水の必要性にふれる機会があるのですが、やはり現場の生の声を聞くと、ものすごく実感が沸いてきます。

なお、被災者の方としては、もっともっと現地に足を踏み入れて、現場を見て何かを感じ取ってほしいと。被災地がこのまま忘れ去られないためにも。

本原稿を書いている10月12日時点の死者15,822人、行方不明者3,923人。あまりにも大きすぎる被災規模と犠牲者。その原因となった大自然の猛威、そして、私たちが構築してきた社会形成(都市機能やライフスタイル)。これらの事実を真摯に受け止め、人間にとって何が大切か、どうあるべきか、今回の経験を何らかの形で未来に繋げていけたらと思います。

ところで、毎日平凡な日々を過ごしているドラ息子はといえば、一言「行って良かった」と、言っていました。

最後に、今回の「東日本大震災」におきまして、被災された皆さまに心よりお見舞いを申し上げます。一日も早い復興と自立に向けて。



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